2017-10-05

今週の不徳義漢。

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-内々けやき「ニンフォガーデン」ワニマガジン社 ISBN:9784862695161
話○ 抜○ 消小 総合○

風光明媚な高原の療養所では欲望にまみれた淫肉の宴が夜な夜なくり広げられ……長編6話+独立短編3本。ねっとりヒリつくような筆致でもって救いがたき衆生たちの愛と性の隘路を執拗かつ冷徹に描き出す作者最新刊は抜き物件としての通算11冊めにして当レーベルからの第3弾コミックスだ。
なんとなく永遠の中堅どころみたいな認識だった人だけど、気がつけばすでに10年以上のキャリアを刻み単行本は一般まで含めればそれこそ星の数ほどリリースされもはや立派な大御所。作家活動の軸足はすでに非エロへ移っていて、成年向けでもっとも活発に執筆していたゼロ年代末~2010年代初頭から比べれば単行本発刊ペースもすっかり落ちついた。それなのに自分は今年5月にコアマガジンより上梓されたひさびさの黄色い楕円本「接続された人妻(おんな)」の購入を申しわけなくもパスしており、当ブログで評価の俎上に載せるのは同じワニマガ物件にして2冊前の「彼女、恋して、セックス」以来およそ3年半ぶり。
メリハリの利いた描線でつむがれるザックリした風合いの絵柄は他に類例のない内々けやきオリジンなもの。ヴェテランだけあって作画のベースはすでに固まっておりこの数年は大きな変化はないが、とりわけ今作は2015-17年にかけての「COMIC快楽天BEAST」掲載分と直近のお話ばかりが収録なのでそのクオリティは非の打ちどころなし。ゆえに表紙に惹かれての衝動買いもまったく支障はないと思うけども、万全を期すのなら版元提供のコミックス情報で内容サンプルの確認を。
クライアントの要請に応じちびっ娘から熟女までおよそどんな年齢のヒロインでも描ける作家なのだが、快楽天BEASTでは普遍的なハイティーン~20代中盤あたりのグラマラス女子が中心。よそのエロ仕事では最近すっかりアダルトさん専科になりかけていてそれがコアからの前作をパスした一因でもあるのだけど、内々けやき謹製のむっちりキュートな10代女子を本作では大いに堪能できてありがたい限り。そう言いつつこの単行本でもフェロモン過剰な年長女性たちはぬかりなく配置されているので、近年のこの人のエロ漫画を読みつけている貴兄が欲求不満におちいるようなことはないはず。
当社物件ではおもに1話完結の読み切りを手がけていたのだけど、今回は多人数ヒロイン各個撃破の長尺もの「駒草の君」全6話がコンテンツの過半を占めるという異色の構成。時は昭和初期、舞台は人里離れ世間の喧噪とは無縁な山奥の治療施設。療養生活のさなか蠱惑的な美女・晶子(あきこ)をはじめ患者仲間やナースに女医など周囲のさまざまな女性たちと捨て鉢でアンニュイな情交にふける高等遊民の主人公・公一(こういち)――と現代エロ漫画らしからぬ雰囲気のなか、ストーリーもまた戦前のサナトリウム文学さながらの高踏的な語り口でつむがれるのだ。残る短編3本の方も行為こそ合意エロの範疇ながらやってることは慎太郎シール誌では禁忌に近いSM調教/変態露出/JK売春と異色作が勢ぞろい。よってスウィートでポップなイチャラヴしか読みたくない向きには絶対にオススメしないが、昨今の一般作ではほとんどお目にかかれなくなった内々けやきの問答無用ダークサイドをこの作品集では存分に味わえるのだ。
全編を貫く頽廃的なアトモスフィアに濡れ場もまた支配され、彼ら彼女らのまるでなにものかに取り憑かれたかのような激しいセックスは和姦にカテゴライズされながらもその内実は狂気を孕んだそれ。1本あたり20-24ページのそう多くない分量でさえ内々けやきの辣腕をもってすれば狂騒の行為をあぶり出すのに充分。日常の柔和な笑顔はあたかも猛禽類のごときものへと変貌し、目前の男根にがっついては精液搾取に没頭し下品きわまりないアヘ顔をさらけ出す女子連中の痴態をマシンガン連射だ。ビッグバストをブリブリ揺らし四方八方へエロワードをまき散らしては幾度となく精を注がれ絶頂する彼女らの肉欲への渇望はまさに底なし。
純朴な少女も清楚な淑女も妖艶な熟女も、いざ褥に横たわれば等しく1匹のメスイヌと化し欲望の僕となる。豊満な肢体を惜しみなく白日のもとへさらしては濡れそぼつ秘所を自分から押し広げ挿入をおねだりだ。リクエストにお応えし生い茂るジャングルをかき分けながら肉ヒダの奥までシャフトをねじこみハードな摩擦運動を開始する。わざと乱暴に乳房を揉みしだき容赦なく腰を使えばその都度ケダモノじみた咆吼を発しだらしなく体液をまき散らす女たちの痴態にいっそう興奮。いよいよ感極まりうわごとのように膣内射精を懇願するヒロインのドスケベまんこめがけ子宮の許容量いっぱいに特濃ザーメンの奔流をプレゼント。
近ごろさらにスラップスティックな様相を増した彼の一般作品とは逆ヴェクトルを突っ走り、閉塞的な世界のなかで浅ましき行状をあらわにする男女のセックス曼荼羅を内々けやきは露悪的なまでに読み手へ提示してみせる。そのありさまはいくらかドライヴがかかりすぎて若干ポピュラリティを喪失している趣もなくはないが、これくらいエッジの効いたエロ漫画は昨今希少なだけになんとも刺激的な読書体験となること請け合い。壮絶な読後感という点ではやはり長編連載作の「駒草の君」が随一だと思うけれど、個人的にはそれに加え2万円で犯らせてくれる地味っ娘同級生とのお金で買った甘美な一夜を少しだけセンティメンタルに描写の短編「君の名は。」がことのほかグッと来たです。

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