2016-09-05

今年度の世界選手権。

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-弥美津ヒロ「カーライフ・カーセックス」ティーアイネット ISBN:9784887746213
話○ 抜○ 消小 総合○

峠道で出会ったカーマニアの彼と整備士の彼女はひと目で恋に落ちセックスロードを激走前中後編+プロトタイプ短編1本+独立短編1本。クルマ愛があふれすぎて必要以上に気合いの入りまくったカーチェイスを従えつつ性器どうし派手に干戈を交えるストロングエロスを展開の作者最新刊は当名義での通算6冊めとなるコミックスだ。
媒体により複数のペンネームを使い分け手広く執筆しつつも密度のおそろしく高い作画とコッテリ濃密なハードファックを安定供給しつつ同人誌までイヴェントごとに欠かさず上梓するエネルギッシュな作家のひとり。今回もちょうど1年前に刊行の前単行本「私は、快楽依存症」からさほど間を置かずにすかさずリリースの早業だ。ただみっちりと後述するように本作はこれまで明確には提示していなかったこの作家の嗜好を臆面もなく全開した一種の信仰告白であり、弥美津ヒロのキャリア上でのターニングポイントともなり得る作品集となっている。
まず従来と変わらない点から述べておくと、ややクセはあるものの端整な一般青年誌テイストのタッチで頭身高めグラマラス系のえっちな10代/20代女子が乱れ飛ぶなんとも眼福なヴィジュアルは本作でもむろん健在。今回から収録作の初出がディテイルまで明記されているのでそちらを参照すると、いずれも当社の「COMIC夢幻転生」/「COMIC MILF」誌上で直近2年以内に描かれたものを掲載となる。ゆえにクオリティは高値安定であり表紙だけ見てのジャケ買いでも問題はないと思うが、万全を期すのなら版元公式サイト内の執筆者情報から書籍データおよび1話まるごと試し読みへのアクセスが可能なのでそちらを閲覧したうえで書店へGO。
明朗快活ラヴコメから波瀾万丈シリアスエロまでさまざまな趣向をそれらしく描きこなす技巧派が今回挑むのは、一部の例外を除き全編これ自動車ネタ。単行本タイトルでも訴求し裏表紙には某走り屋漫画ばりのカーチェイスを抜粋したりして初手から異様な空気をかもし出す。そしていざページを手繰り出すと巻頭からしばらくまんこはおろか女子の肌すら見せずにひたすら公道バトルが展開されるのだから、パンツを下ろし待機していたこっちもビックリ。実質的なタイトル・チューンである前中後編「頭文字M R413」および巻末収録のその前哨戦とも言える読み切り「頭文字M」のいずれも、2台でくり広げた峠道の死闘が幕引きとなりコクピットを下りてきた男と女の出会いから物語がスタート。ストーリー展開自体はボーイ・ミーツ・ガールの恋愛ものとして一般的なプロセスを踏むのだけど、登場人物たちの趣味や職業、思想信条に至るまで深くクルマの要素が入りこんだ異様に密度の高い背景設定が最大の特徴だ。エロ漫画内の描写で車やバイクが小道具として用いられることはよくあるけれど、ここまで自家用車という存在がキャラメイクと不可分に密着し重要な役目を担うのは他に類を見ない。一方で日本社会の経済構造の重要なバックボーンのひとつである自動車産業に彼ら彼女らの生活全般をコミットさせたことで、都会すぎずド田舎すぎずのありふれた郊外における普遍的なロウワー・ミドルクラスのライフスタイルを地に足のついたリアリティとともにに描き出すという副産物が生じており興味深い点だ。
じっくりねっとり営まれる濡れ場もまたその多くが車内もしくは駐車したすぐそばのオイルの匂いがするなかでの交合となる。弥美津ヒロ作品で頻出するご奉仕系のハードなプレイやビザール風味の性具フル活用などの美点を継承したうえで、行為内容をいちいち自動車用語に顴骨堕胎させ欄外へ詳細な注釈をほどこしながら本番が進行し、最後はサスペンションがギシギシ振動しボディ全体が共振する、あたかもクルマ自体がファックしているかのような絶頂シーンでしめくくられる光景で興奮する前に思わず爆笑。いやあほんと好き放題やってますね!
公道上での真剣バトルからバケットシートを褥代わりにこんどは性器どうしのタイマン勝負へ舞台をチェンジ。のっけから股間にしゃぶりつき絶品の口腔テクで先走り汁を搾取されたのちはすかさず本番突入。人工皮革の匂いと彼女の体液のそれとが入り交じるなか、肉棒をピストンに、蜜壷をシリンダーに代え夜の4ストローク運動を高回転でくり広げ四方八方へオイルをまき散らしてはトロトロのイキ顔さらす彼女の艶姿にぼくらの精巣もオーヴァーレヴ寸前だ。いよいよ感極まり日本語にならない嬌声を発し昇りつめてゆくヒロインたちの子袋いっぱいに大量のザーメンの奔流をプレゼント。
ごくたまにクルマ雑誌をパラ見する程度の無知っ漢たる自分では弥美津ヒロの愛情あふれる車ウンチクのすべてが理解できたとはとうてい言えないけれども、それらを単なる知識羅列ではなく密接に物語へ組みこみ彼ら彼女らの恋愛成就のキーとして作用させる巧みな手法には脱帽せざるを得ない。エロ漫画業界広しといえどもこれほどカーマニア全開の描写をするのは他にせいぜい荒岸来歩くらいで、本作が評判になれば参戦者も増えこのニッチジャンルも一気に盛り上がることだろう。そう言いつつもマイちんこ的にもっともお世話になったのは唯一の非クルマ系短編「性奴隷になりたくて」主演女優のセックススレイヴ志願お嬢さまJK・御門隷(みかどれい)さんのドスケベすぎる痴態でございました。

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