2014-05-10

今月のグレイト・エスケイプ。

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-ぽんこつわーくす「お嬢様は逃げ出した(3)」竹書房 ISBN:9784812485767
話△ 抜△ 消大(詳細性器描写なし) 総合△

世間体の悪さや強力なライヴァルの存在、はたまた甘く危険な誘惑など幾多の試練を乗り越え身分違いの2人の恋はようやく結実し表題作長編8話(第19-最終話、完結)&描きおろしエピローグ。マークなし。行きつ戻りつ読者をやきもきさせながら続いた作者初の長期連載もめでたくグランドフィナーレとなったこの最新刊は通算6冊めにして非成年扱いエロ物件としての第5弾コミックスだ。
原作担当・猫蔵と作画担当・しーたによるこの漫画制作ユニットはいまやエロのみならず一般誌にも進出してコミカライズ作品など執筆して作家活動は順調そのもの。分業の強みを活かし仕事先が増えても生産ペースを落とすことなく商業に同人にと大活躍だ。そんな彼らのいまや代表作といってもいいこちら、当ブログでも1巻および2巻と俎上に載せて今回当然のごとく最終巻までお付きあい。
少女漫画的繊細さと適度なオタ風味の幸福な結合であるたいそうキャッチーな筆致はデビュー当初からの変わらぬ武器だが、昨今はとりわけ描線がシンプル方向になったにもかかわらずむしろ艶っぽく進化してますます蠱惑的だ。この訴求力高すぎる作画を角川だの電撃だのが放っておくわけがなく、青年誌で描き出すようになったのはいわば必然。商業ガチエロからの撤退は比較的早かった方だが、いずれライトHでも見られなくなる日が来るのかなあ。
物語の大枠は世に星の数ほど出回っている階級差ラヴもの――それこそチャタレイ夫人とかそのへんから――のヴァリアントで目新しさはいっさいない。小説や演劇だと悲劇方向に味つけすることが多いけれどエロ漫画においては大半がハッピーエンドであり、本作もお約束どおり甘やかに恋愛成就だ。まあコンビニ売りである掲載誌の「ビタマン」の誌風からして悲恋に終わらせるわけはなく連載開始当初からゴールは見えていたわけで、そこは送り手も読者側も全員織り込み済みだろう。これでリアルな現実そのままにカップル引き裂いてそれぞれ同じ階級同士の別の相手をあてがったりしたらすげえけど、まあその後2度仕事は回ってこなくなるだろうからこの水戸黄門的決着で正解。
本筋だけなら1冊で終わらせることもできたこのオハナシをどうにか引き延ばすべく登場するメインヒロイン以外のかき回し役を随所に配置し彼女らに濡れ場の多くも依存してきたが、今回は主演女優たるお嬢さま・静香が逃避行から帰還しやっとこマーヴェラスな裸体を見せつけてくれる。元来慎太郎シール誌のなかでもひときわヌルエロ志向なビタマン掲載作ゆえどのみちハードファックは望むべくもないが、ようやくの本命エロスにぼくら読者のモヤモヤもいくらか解消。最愛の使用人・透と無事再会を果たし2度と離れないときつく抱きあう2人のラヴラヴH全開ぶりに心はほっこり股間はモッコリ。そうはいっても黄色い楕円物件に慣れきった目にはなんともままごとティックなセックスに見えるし、なにより竹書房編集のありがたいご指導(ひにく)により性器結合シーンの直截的表現はすべてスポイルされているので、そのへんは覚悟のうえで購入すること。
紆余曲折ありつつも無事メデタシメデタシの大団円を迎え、またぽんこつわーくす得意のほっこりさわやか後日談も描きおろされていて、読後ハートウォーミングな気分にひたるにはピッタリの甘エロ物件。お約束の嵐であっても心身が気持ちよく癒されるのならそれもまた一興だろう。ちんこをハードに駆動するには不向きなので強力な夜のお供とはいかないが、気分を高揚させるべくスターターとして活用するのなら充分に働いてくれるはずだ。身勝手な願望を述べるなら薄い本以外でも問答無用のストロングファックが読みたいところだが、ヘタすりゃ一般誌専業にもなりかねない情勢下でぜいたくは言うまい。登場キャラでは正統派お嬢ヒロインの静香はむろんのこと、2巻から引き続きの活躍を見せるショートヘア無表情系メイド・楓ちゃんのクールな出で立ちと一瞬だけ見せた感情の決壊ぶりがたいそうグッと来たです(でも彼女の本番はどうにかして実施してほしかった……)。

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